ラークスパー










絵を描いていたら、目の前に槍が飛んできた。

「うわっ…と、と」
「フォルデ!!」

危うく、すれすれで俺は自分に向け投げられた手槍を避け、同時に相棒の投げた手槍が相手の首元を貫いた。
俺を狙って見えた隙を突いて、カイルは槍を命中させたのだ。

「サンキュ、助かったよカイル!」
「助かったよ、じゃない!危うくお前が殺られるところだったんだぞ!!」
カイルはいつもの様に少し怒った口調で返す。それが心配の裏返しだとは知っていたが、
「悪い悪い、つい…」
「!?」
いつもと変わらず、軽い口調で謝るフォルデに駆け寄ったカイルは、彼の姿をまじまじと見て愕然となる。
「お前…またこんな戦場で絵を描いていたのか!?」
「あ〜…悪い、つい…」
ばれたか、と気まずそうにカイルから視線を逸らすフォルデの手元には、肌身離さず持っているという画材。それだけならまだしも、動き難い証拠となる絵が手に握られている。

「同じ言い訳を使うな!あれ程気を付けろと言っているのに…!!」
カイルは戦場だということも忘れ、今にもわなわんと震える拳を振り上げてきそうな程怒っていた。
「ちょ、カイルってば!此処戦場だって!!此処で喧嘩なんてやったら…!!」
戦場で味方同士が容赦なく喧嘩する姿に、思わず敵味方が瞬間唖然としていたと、後で二人してエフラムから半ば呆れ気味に怒られた。






「…なーあ、カイル」
「…」
「なあっ、悪かったってー」
「…お前なんか」
「悪気はなかったんだよー」
「お前なんかっ!もう知るかっ!!」
「ええっ!?そ、そりゃないぜカイル!!」
カイルは本当に顔を真っ赤にして怒っている。今にも深緑の髪から白い湯気が出てきそうな勢いだ。
それも当たり前といえば当たり前だ。なにしろ、フォルデと喧嘩を繰り広げたあげく、滅多に怒られる事のないカイルまで主君のエフラムに怒られたのだから。
「……したのに…」
「へ?」
「心配…した、んだっ俺は!!」
「…っカイル」
もう勢いよく火を噴くくらいの勢いでカイルは叫ぶように言い放った。それは本音なのだろう。伏せがちにされた目は視線を定めず泳いでいるし、手元はわなわな震えたままだったし。
「ありがと。……カイルが居て、ほんとに助かってる。いつもだけど」
「お前と居ると…本当に寿命が縮まる気がする」
カイルはまだ少し怒ってはいる様だったが、もう諦め掛けてきている様でもあった。そんなころころと変わる表情に、俺は暫し気を取られている。
本人に言ったら、また怒り出すのだろうから言わないけれど。

お前の怒った顔が見たかったから、なんて言ったらやっぱりお前はきっと顔を真っ赤にして怒るんだろうな。
お前のいろんな表情が見たいから、こんな事を繰り返してるんだって、はやく気付いてよ。










End


ちょっと困った兄さん(笑。
どこまでは適当で、どこからが本気なのかよく分からない人物です(私の中では
んでもってカイルはそんな彼に振り回されている人(おいおい 2013,3,31



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